お知らせ

今泉教室コラム『本を読もう!!』2021年第一回

明光義塾今泉教室 教室長・浜津翼

 

2021年4月から中学校の教科書が新しくなります。そこで問われるのは『思考力』『判断力』『表現力』ですが、それらの土台となるのは『文章読解力』です。文章や資料を読むことで『思考』し『判断』し『表現』していくことになるからです。『文章読解力』を上げる近道は、単純に本を読むことと考えますが、読書をすることの利点を小説『神様のカルテ0(作:夏川草介、出版:小学館)』から考えてみたいと思います。1年目の研修医・栗原一止(くりはら いちと)先生とその患者・國枝さん(元高校の国語教師)のとある対話のシーンです。

 

國枝「本はよいですな、先生」

栗原「確かに本は良いですが、肝心なときに限って、なかなか役には立ちません。國枝さんのように、治療を引き延ばそうとする患者に対してどうすればよいか、『草枕』にだって答えは書いていない」

國枝「本にはね、先生。『正しい答え』が書いてあるわけではありません。本が教えてくれるのは、もっと別のことですよ。ヒトは、一生のうちで一個の人生しか生きられない。しかし本は、また別の人生があることを我々に教えてくれる。たくさんの小説を読めばたくさんの人生を体験できる。そうするとたくさんの人の気持ちもわかるようになる

栗原「たくさんの人の気持ち?」

國枝「困っている人の話、怒っている人の話、悲しんでいる人の話、喜んでいる人の話、そういう話をいっぱい読む。すると、少しずつだが、そういう人の気持ちがわかるようになる

栗原「わかると良いことがあるのですか?」

國枝「優しい人間になれる

栗原「しかし今の世の中、優しいことが良いことばかりではないように思います」

國枝「それは、優しいということと、弱いということを混同しているからです。優しさは弱さではない。相手が何を考えているのか、考える力を『優しさ』というのです…。優しさというのはね、想像力のことですよ

温かい声に、一止はただ声もなく耳を傾けていた。多くのことを伝えようとして行きついた、それが一つの答えであったのか。束の間の沈黙が続き、國枝さんは書棚を眺めたまま、独り言のようにつぶやいていた。

國枝「あなたは優しい人だ。だからこそ、私の勝手なわがままを聞いてくれたんでしょうな…。しかし優しい人は、苦労します」

先生はたぶん苦労人だ、と笑った声が、いつまでも耳の奥に響くようであった。

 

人間は1人として同じ人はいません、70億人の人間がいれば、70億の考え方や感じ方があります。そのような一人一人の異なる考え・感性があることを知り、その人たちのことを想像する。それが優しさであり、『読解力』と言えるのではないでしょうか。

それならば本ではなく、映画やテレビドラマ、アニメや漫画でも良いのでは?と思う人もいるでしょう。もちろん、それらは読解力を鍛えることに役立ちます。しかしながら、そういったものは既に完成されたものを見ることになるため、文字だけで書かれた本と比べると想像力は育ち辛いと言えます。本であれば、登場人物の見た目や表情、その場所の光景など全て自分で想像することになります。また、文と文の間に「書かれていないこと」を考えることになります(いわゆる行間を読むということです)。   たくさんの本を読み、たくさんのことを考えてください。そうすれば自分の中の価値観がいかに狭いものだったかがわかるようになります。

そして、それがわかれば、きっと生きることが楽しくなっていきます。自分のことを認めることにも繋がるはずです。1人として同じ人はいないのだから、「自分は自分で良いのだ」と思えるでしょう。   学校で学んだ勉強は世の中に出た後で役に立たないという人がいます。私はそうは思いません。この世の中に役に立たないことなど1つもありません。学んだことをどう生かすか、是非考えてみてください。

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